日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」~資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍~

特集

Feature

2026.02.02

明延で「限界集楽」がはじまる!

養父市大屋町にある明延鉱山は、明治42年(1909年)に錫鉱石が発見され、日本最大の錫鉱山として発展しました。かつては多くの人が暮らし、まちは大いに賑わっていましたが、昭和62年(1987年)の閉山後は人口減少が進み、現在は高齢化率70%を超える限界集落となっています。

 

そんな明延で、新しい動きが生まれています。

その中心となっているのが、レトロな佇まいが印象的な「旧・小林たばこ屋」。
かつては、たばこ屋として、また宿泊所としても使われ、地域の人に親しまれてきた建物です。

 

栄えていた当時の姿を残したままの建物は、約10年前から空き家となり、売りに出されていました。

 

そんな中、このレトロなたばこ屋がSNSで紹介され、話題になります。
「残して欲しい」という多くの声がとどき、地域の方の「残したい」という思いと重なります。

 

そこで、養父市大屋町明延区、NPO法人但馬を結んで育つ会(豊岡市)、養父市社会福祉協議会(養父市)、そしてコミュニティデザインラボ(宮崎県三股町)が連携し、クラウドファンディングによる支援募集をスタート。

 

そして2025年6月、明延のシンボル的な建物を活かし、地域の人同士が集える場、さらに地域外の人とも交流できる拠点として「小林たばこ総合会館」がオープンしました。

 

 

 

当日のプログラムは盛りだくさん。まずはジャズライブからイベントがスタートしました。

 

 

 

 

続くゲストトークには、『ときを感じるお宿図鑑』の著者・吉宮晴紀さんが登壇。
吉宮さんが趣味で投稿したSNS(X/旧Twitter)が、この取り組みの大きなきっかけとなりました。

 

「こちらのたばこ屋さんを投稿した際、ここまで大きな反響があるとは思っていませんでした。インパクトのある建物そのものの価値が、SNSの数字として表れたのだと思います」

さらに、日本家屋などに用いられる「鏝絵(こてえ)」という建築技法で作られた、たばこ屋の看板について、その価値や貴重さも語られました。

 

 

続いて行われたクロストークには、明延の小林区長をはじめ、「但馬を結んで育つ会」の千葉さん、そして吉宮さんと同じく旧小林たばこ屋に注目していた「一人旅研究会」主宰の栗原悠人さんが登壇しました。

(左から、小林区長、千葉さん、吉宮さん、栗原さん)

 

栗原さんは次のように語ります。

「以前から存在は知っていましたが、明延鉱山を訪れた際にこの建物を見かけ「前に見たあの建物だ」と気づきました。特に印象に残ったのは、『たばこ』と書かれた看板のデザインです。自分自身は兵庫県に特別な縁があるわけではありません。それでも、初めて訪れた人間の目にも自然と飛び込んでくる力がこの建物にはあります。昭和レトロな建築の魅力は、建築の専門知識がなくても伝わるものなのだと感じました。」


「但馬を結んで育つ会」代表で医師の千葉さんは、売り物件だったこの建物を購入されたそうです。
「最初にこの建物を見に来た時点では、今の姿はまったく想像できていませんでした。その後、多くの人が関わり、自発的に動き始めてくれたことで、自然と流れが生まれ、現在につながってきたのだと思います。購入を決断したものの、後悔は一切なく、本当に良かったと感じています。この場所が、これからの未来へとつながっていってほしいと願っています。 」


明延区の小林区長は
「閉山したときは約1,000人いた人口が、20年後には150人にまで減少しました。その時にこのままだったらここは消える、限界集落っていう言葉を私初めて耳にしたんですよ。子育て世代だった我々は、何とかしてくれ、こんな思いでした。」「ここがたばこ屋として、すごく栄えてるころから閉じてしまって、今みたいにまた開くっていう一連の過程を見て、全国の方から本当にあったかい支援をいただいた。本当にお礼申し上げます。」と感謝の言葉を述べられました。

 

 
「小林たばこ総合会館」が目指しているのは、地域の人や訪れる人が自然と集まり、行き交う“拠点”のような場所。
この建物の中にいくつかの役割を持たせることで、誰かの居場所となり、人と人がつながる複合的な空間をつくりたいと考えています。
 
 【空想土産屋】
「もし昔、明延にお土産屋さんがあったらこんな商品があったかも?」という空想をカタチにした、ユニークなグッズを販売。
訪れる人たちが明延の歴史や魅力を知るきっかけをつくります。 

 

 

 

【あけのべ購買部】
日用品や地元農家から仕入れた有機野菜を販売し、地域の人たちが集まる場所に。おしゃべりしたり買い物したり、自然と人がつながる場を目指します。

 

 

 

セルフレジにお金を入れて、セルフ帳簿に購入したものを記入します。

 

【テレビ病院】

準備中のオンライン診療の体験も実施。遠方の病院に行けない住民を支える、新しい医療のかたちです。

 

 

 

現在、「小林たばこ総合会館」は、住民ボランティアの協力により、毎週火曜日(10時〜15時)に開館しています。

 

人口減少や高齢化という課題を抱えながらも、人の想いと行動が重なり、新たな拠点として生まれ変わった「小林たばこ総合会館」。
キャッチコピーの「限界集楽」が示す通り、限界を超えて“楽”を集める場所として、明延に新しい風を吹き込んでいます。


この場所から、これからどんな物語が広がっていくのか、今後も目が離せません。

 

 
【ライター:轍】

NPO法人但馬を結んで育つ会

社会福祉法人養父市社会福祉協議会

コミュニティデザインラボ

明るい一揆

明延鉱山探険坑道

S M T W T F S
2026.2
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

CATEGORY

ARCHIVE

PAGE TOP